チケット取置き問題について
普段、自分がよく裏方としている事の多いインディーズバンド界隈における公演チケットの取置き問題についてふと思いついたので文章にして残したいと思う。
1.要旨
従来の方式だと、前売・予約(取置き)と当日で価格が異なるというものであったが、それを前売と予約(取置き)・当日で価格が異なるものにする提案。
例)
前売・予約(取置き) |
¥2,500 |
当日 |
¥3,000 |
↓↓↓
前売 |
¥2,500 |
予約(取置き)・当日 |
¥3,000 |
2.注意点
このシステムに関して、仮に導入される事になっても今は全てに適用させる必要はないと考えている。
適用させるとしても、ワンマンや自主企画・レコ発といった自分達が主体となる公演をオススメしたい。
なぜなら、これだけだとただ単に演者の集客に対する利点を求めるだけになってしまう。
これまでの「取置き」というシステムは行けるかどうかわからないからチケット支払いを後回しにできるメリットがある。
そして、演者側にはこの「行けるかもしれない」がデメリットとなる。
この「取置き」を「予約」と捉え直し、この利害関係をうまく一致できないかと考えていた。(所謂、うぃんうぃん。うぃんうぃんうぃんうぃん)
とはいえ、ただ単にこのシステムに切り替えた"だけ"では正直大きな変化は見込めないと思う。(むしろ現状だと難しくなるかも。)
実際に普段、公演時の物販をする場面によく立ち会うのだが、演者がMCで「チケット売ってます。良かったら買ってください。」なんて言っても、物販に行って置いてあるのは他のグッズに埋もれ存在感を失ったペラペラの紙切れ。物販に来ても正直、ほとんど見向きもしない。
3.では、このシステムをどううまく使うのか?
先にも触れたように、このシステムをまずオススメするのはワンマンや自主企画・レコ発といった自分達が主体となる公演に対して。
どうするのかと言うと、簡潔に言えば前売チケットに何かしらの特典のようなものをつけるのだ。
要は前売チケットという名のインビテーションチケット。(むしろインビテーションチケットと名乗った方が格好がいい気がしてきた。)
例えば、自分達の名前が入った封筒などにオリジナルの前売チケットを封入する。
イメージしてみてほしい。
この封筒が手触りのいい真っ黒な封筒で、情報が白文字やシルバーで記載され、赤い ろう で封がされているだけでも、すごく格好良く思えないだろうか。
そして、それを開けたらチケットと共にメンバーからのメッセージなど入っていたら受取手はより嬉しいはずだ。
もちろんこれらはあくまで一例ではあるが、要はチケットもグッズ。どれだけでも工夫の余地はある。
かといって、この前売を会場限定販売にする必要はないと考える。手売り、郵送、発券など様々な手を使えばいい。
公演には行けないが、早く自分の元に前売チケットを手にしたい場合、送料負担で郵送してもらうのもアリだし、まず公演に行く事を確約したいのであればe+などで発券すればいい。
そして、当日に用意された本当の前売チケットと引き換え。最近は、どこのライブハウスもキチンと発券機で買えるためのコードを用意してくれる。そこまで難しい事ではないと思う。
いってしまえば、前売チケットというのはお得な早割だと考えればいい。
事前に購入する事で、チケットに加えて特典がついてくる。しかも価格は予約・当日よりお得。
早割が効かせられないなら予約は受け付けるので当日券と同じ金額でお願いします。っていうカタチ。
もちろん、前売チケットを数量限定や期間を決めて販売するのも大いにアリだと思います。
4.前売チケットの仕掛け方
ここからは主催者側に対して伝えておきたい。(もし、ライブハウスにお客様としてこられる方々が読んでくれていたら、この章はあまり見ることをオススメしないです。)
ここまで書いて来たが、「でも、その前売チケットを作るのに沢山お金かかるんでしょ。あー無理無理。お金ないお金ない。そんなのにお金使ってる余裕ない。」と言う人もいるだろう。
バカヤロウ。(あくまで心の中で)
本当にココにお金をかける必要がないのなら、それで良い。これは間違いない。僕も言及するつもりはこれっぽっちもない。
なんせ、これも演者の中でも該当する人達に向けて書いているのだから。ただ、
正直、少しのアイデアと工夫次第でコストなんてものはどんだけでも下げれます。
何をしたらファン(お客様)は喜んでくれるのか。ちゃんと考えればわかるとは思うが、そんなに自分達がお金をかける必要がある事をファンは求めていない。
自分達が、自分達の流れを作る事の方が圧倒的に大事だと僕は考える。
「クオリティ云々が…」や「そんな時間は…」などと言うのなら、僕等のような立場の人間を大いに利用すべきかと。人一人に与えられた時間は有限なのは当たり前。
だからこそ、人の時間を使わせてもらうというのも大事な手法。(あまり恩着せがましい事は言いたくないが、普段自分達がライブをしている場所も自分以外の人達の時間も使ってるから成り立っている。)
例外はあれど、全て自分達(の時間だけ)でやろうとするからコケるのだと本当に思います。使えるもの、利用できるものはどんどん使っていこう。
実際に、グッズ製作の御依頼を頂いた時も先ず僕は「何を作るのか。」といった部分から可能であれば一緒に考えていきます。
頭ごなしに作りたいもの作って、高い原価で安く販売して、あまり売行きが良くなくて、、、は製作者側としてもやっぱり寂しいものがあります。どうせなら売れてほしい。利益をちゃんと手にしてほしい。その仕組みを作るのも僕等の役割です。
話が少し逸れてしまいましたが、前売チケットの仕掛けとして、コストを抑えて製作する方法というのはいくらでもあります。前売を買うメリットをもっとシンプルに考えれば今以上にみえてくると思います。
大事なのは、少しのアイデアと工夫。間違いないです。
5.おわりに
ここまで意気揚揚と生意気に持論を展開してきましたが、ディレクター・デザイナーという立ち位置から見てこの取置き問題は昔から言われてきただけにずっと気になるところがありました。
今回の提案は非常にシンプルなものですし、数学に置き換えたら先に計算しなければいけないカッコの位置を置き換えただけ。
また、このようなアイデアに辿り着いたのも、たまたま目にしたチラシの表記ミスからでしたが、今の現状を大幅に変えずにそれをも巻き込んで現場が変化していけたらおもしろいと僕は考えています。
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SHINJI YAMAMOTO
director / graphic designer
2015年より名古屋のイベント「ontology」にデザイナーとして就任。
アーティストのプロデュース、マネジメントなども手掛け、最近ではナツミとスギウラマヒロの写真展『Ro-ots.』の総監修・キュレーター・デザイン等全てを手掛けて成功を収めたばかり。
現在までにontologyや音楽関係に限らず、様々な分野でのデザイン・企画を行っている。
Official Web Site : https://shinjiyamamoto401.tumblr.com/